canashiroのブログ

はてダ挫折者の再挑戦。

時をかける少女をみてきたー。

んー、各地では大絶賛だけど、あくまで普通に面白い映画どまりだよなぁ。名作っていうよりも良作かな。原作のエッセンスと枠組みをうまく活かして現代的な味付けでもって見事に消化しきれてる良作。とくに主人公のキャラクターがけっこう違ってよく言えばポジティブ、悪く言えばおバカなノリが作品全体を貫いてるのが、原田版との大きな違い。これによりSF色が多少薄まって、青春映画としての側面がよりクローズアップされていると思う。ギャグ要素はしつこいまでの天丼で、もう失笑がおきてたし。
マニアックな目線でみると、貞元デザインのキャラクターがすこしラフな作画で、ジブリっぽい背景の中をジブリっぽい動きをするのが面白い。美術監督カリ城とかやった人なんで背景なんかはもろジブリっぽい雰囲気が漂ってます。この夏はゲドといい、時かけといい、高畑監督のアレといいジブリのDNAが蔓延してるね。でも時かけジブリ作品ではない、というところにジブリの抱える重い病気が垣間見えますわな。僕らの子供の世代ではジブリ作品は糞になってるだろうなぁ。金はあっても、人を育てなきゃいい作品は作れませんて。
原作(および原田版)ファンの目線でみると、魔女おばさんのキャラが原作と微妙に違くね?とおもうけど、細かいフォローもあって楽しめるかな?

いろいろ言ってるけど、今年の夏一番楽しめる映画(これはアニオタに限らず)だと思うので、多少でも興味があるならみとけ。できれば夏のうちに映画館で見たほうがいい映画だよ、これは。

以下、ネタバレありの細かい部分の突っ込み。


まず、ひとつ残念だったのはラベンダーがないってこと。理科室という舞台は残してあるものの、くるみ形のデバイスによってタイムリープ能力を得るということで、もうすこしラベンダーの香りを感じさせてくれるとよかったと思うのだけど、ここは原作とのはっきりとした決別を表現してるのかな。
そのほか、未来人の造詣が優等生→劣等生(個性的な転校生)への180度変更(もうひとり幼馴染が前作のケンソゴル的優等生として描かれているのは原作ファンへのミスリード目的だろうか?)、タイムリープが薬学的手段(ラベンダー)からデバイスによる身体への蓄積へと変化していたり(これはSF色が薄まる一因となっているだろう)。そのほか、岸部一徳扮する神経質そうな古典教師が、立木冬彦演じるヤクザな数学教師に変更されていたりと原田版とあえて180度変えているのだろうと思う演出が多い。これは意図的なものだろう。
原作ファンへのサービスはなんといっても、魔女おばさんとして原作の主人公が登場することと、彼女が20年前の事件について語るシーンだ。写真たての横には律儀にラベンダーが沿えてあり、ラベンダーの重要性は忘れられてはいない。(ということは、やはりラベンダーによる薬学的手法からくるみ形デバイスへの変化は意図的に原作から逸脱しようとした結果だろう)
そのほか、エンディング間近クライマックスで流れる挿入歌とエンディングに流れる主題歌は青春映画を彩るのにとてもふさわしい出来で、感動を盛り上げてくれる。これまた原作版主人公(要するに魔女おばさん)と主人公・真琴の違いがこと主題歌においてもはっきりと示されているような気さえする。
総括的にみて、原田版からの意図的な逸脱と原田版へのオマージュ(細かいねただが)が盛り込まれていて、原作ファンでも納得の出来だろう。おしむらくは魔女おばさんを演じる声優が原田知世ではないことぐらいか。おじゃ魔女で声優やってたし、不可能ではないと思うんだが……うむぅ。